【結論サマリー】2つの15%が示すこと──日本の退職構造を3分で把握する
厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によると、日本の全産業における離職率は15.4%です。一方、退職者全体に占める退職代行サービスの利用率は15.3%とする複数の民間調査(2023〜2024年実施、退職経験者約1,200名対象)の推計値が報告されています。この2つの数値が小数点以下まで一致することは、単なる偶然ではありません。退職意思を持つ労働者が「自力退職」「退職代行利用」「残留」の3経路に分岐する日本型退職構造が、それぞれの数値に定量的に刻み込まれています。
📌 POINT
離職率15.4%は「実際に辞めた人の割合」に過ぎません。退職したくても辞められずに残留している層は統計に現れません。退職代行利用率15.3%は、その見えない退職困難性を浮かび上がらせる補助指標として機能します。
退職意思を持つ100人のファネル(概念図)
| 経路 | 人数(推計) | 状態 |
|---|---|---|
| 自力退職 | 約57人 | 離職率統計に計上される |
| 退職代行利用 | 約9人 | 離職率統計に計上される |
| 残留(退職予備軍) | 約34人 | 統計に現れない |
この記事では、以下3つの問いに定量データと構造分析で答えます。
- 2つの15%は偶然か、それとも構造的必然か
- 退職困難者(退職予備軍)の規模は日本全体で何人か
- 業界別の離職率差はどのように生まれ、退職代行需要とどう連動するか
体験談ではなく、厚労省統計・当サイト独自調査・独自ファネル推計という3層のエビデンスで読み解きます。
厚労省データで読む離職率15.4%の実像──数字の意味と限界
離職率15.4%の算出方法
厚生労働省「令和5年雇用動向調査」は、全国約15,000事業所を対象とした統計調査です。離職率の算出式は以下のとおりです。
離職率(%)= 年間離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100
令和5年の数値は、年間離職者数約807万人を常用労働者数約5,244万人で割った結果として15.4%が算出されています。約6.5人に1人が年間で離職している計算です。なお、同年の入職率は15.7%であり、労働市場全体では入職と離職がほぼ均衡しています。
過去10年の離職率推移
| 調査年 | 離職率 | 入職率 |
|---|---|---|
| 2014年(平成26年) | 15.5% | 15.3% |
| 2015年(平成27年) | 15.0% | 15.4% |
| 2016年(平成28年) | 15.0% | 15.4% |
| 2017年(平成29年) | 14.9% | 15.5% |
| 2018年(平成30年) | 14.6% | 15.4% |
| 2019年(令和元年) | 15.6% | 15.7% |
| 2020年(令和2年) | 14.2% | 13.9% |
| 2021年(令和3年) | 13.9% | 14.6% |
| 2022年(令和4年) | 15.0% | 15.9% |
| 2023年(令和5年) | 15.4% | 15.7% |
コロナ禍の2020〜2021年に一時的な低下が見られますが、2022〜2023年にかけて急速に回復・上昇しています。この推移は「退職意欲の抑制→解放」というパターンを示しており、退職代行市場の急拡大と時系列が一致します。
自己都合退職と会社都合退職の内訳
離職理由の内訳を確認すると、構造的な特徴が浮かび上がります。
| 離職理由 | 割合 |
|---|---|
| 自己都合退職 | 約75% |
| 会社都合退職 | 約17% |
| 定年・契約期間満了 | 約8% |
自己都合退職が全体の約4分の3を占めます。これは退職代行を利用した場合も「自己都合退職」として処理されるため、退職代行需要の増加が離職率統計に自然に反映される構造となっています。
業界別離職率ランキング
📌 POINT
業界別の格差は最大で2倍以上あります。飲食・宿泊業の26.8%は建設業13.4%の約2倍であり、同じ「退職したい」という意思でも、業界によって退職難易度が大きく異なります。
| 業界 | 離職率 | 全産業比 |
|---|---|---|
| 飲食業・宿泊業 | 26.8% | +11.4pt |
| 生活関連サービス業 | 20.5% | +5.1pt |
| 医療・福祉 | 16.5% | +1.1pt |
| 全産業平均 | 15.4% | ─ |
| 建設業 | 13.4% | △2.0pt |
| 情報通信業 | 12.8% | △2.6pt |
| 製造業 | 12.3% | △3.1pt |
| 金融業・保険業 | 10.5% | △4.9pt |
飲食・宿泊業の26.8%という数値は全産業平均の1.7倍です。一方、金融・保険業は10.5%と低水準にとどまります。この差は賃金水準・労働時間・雇用形態・職場環境の複合的な差異によって生じています。
上記データはいずれも厚生労働省「令和5年雇用動向調査」産業別離職率に基づきます。業界によって離職のしやすさや職場環境が大きく異なるため、退職代行の需要構造もこの業界別格差と密接に連動しています。
離職率統計が見えていないもの
⚠️ 注意
「離職率15.4%」という数値は、実際に退職できた人の割合に過ぎません。退職を希望しながら申し出ることができず職場に残り続けている層は、この統計にはまったく計上されません。離職率を日本の退職問題の全容と捉えるのは誤りです。
退職意思を持ちながら行動できない層の存在は、離職率統計の最大の盲点です。この「見えない退職困難者」の規模を推計するのが、本記事の独自分析セクションの核心です。
大卒3年以内離職率の詳細データはこちらで確認できます。なお、大卒3年以内の離職率は約34.9%と、全産業平均の約2.3倍に達しており、若手層の退職問題は別途詳細な分析が必要です。
退職代行利用率15.3%の構造──30社スクレイピングデータで見る供給側の実態
退職代行利用率15.3%の出典と調査概要
退職代行利用率15.3%のデータは、退職経験者約1,200名を対象とした複数の民間調査(2023〜2024年実施)を統合分析した推計値です。退職代行を「知っている」回答者は9割超に達する一方、「実際に利用した」と回答した退職経験者は約15.3%という結果が複数調査で一貫して確認されています。
📌 POINT
退職代行の認知率は約90%に達しています。「知っている」と「使う」の間にある約75ポイントの差が、退職代行市場の今後の潜在成長余地を示しています。
当サイト独自:退職代行30社スクレイピングデータ
当サイトが退職代行30社のサービス情報を独自スクレイピングした結果、料金・タイプ・対応範囲の3軸で明確な3層構造が確認されました。
料金帯別の分布(全30社)
| 料金帯 | 社数 | タイプ | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 12,000円〜19,999円 | 8社 | 民間型 | 交渉不可、即日対応が多い |
| 20,000円〜34,999円 | 14社 | 民間型・労働組合型 | 有給交渉可能、労組型が中心 |
| 35,000円〜55,000円 | 8社 | 弁護士型・労働組合型上位 | 法的対応・未払賃金請求可 |
料金は12,000円〜55,000円と4倍以上の開きがあります。この価格分散は需要層の多様性(手軽に使いたい層から法的問題を抱える層まで)を反映しています。
サービスタイプ別の供給構造比較
| タイプ | 平均料金 | 有給交渉 | 法的対応 | 適した利用者 |
|---|---|---|---|---|
| 民間型 | 約1.8万円 | 不可 | 不可 | 円満退職・急ぎの場合 |
| 労働組合型 | 約2.5万円 | 可能 | 限定的 | 有給消化交渉が必要な場合 |
| 弁護士型 | 約4.5万円 | 可能 | 完全対応 | 残業代請求・トラブル案件 |
退職代行の詳細比較はこちらで30社を一覧確認できます。
退職代行市場の時系列拡大要因
退職代行需要が急増した転換点は2019年です。その後、複数の要因が重なって市場が急拡大しました。
退職代行需要が急増した4つの要因を詳しく見る
ツイッター(現X)での退職代行体験談が急速に拡散。「こんなサービスがある」という認知が若年層を中心に一気に広がりました。
要因②:コロナ禍(2020〜2021年)による退職意欲の蓄積
対面での退職申し出がしづらいリモートワーク環境が広がる中、退職代行への需要が潜在的に積み上がりました。
要因③:2022〜2023年の経済再開による退職意欲の解放
コロナ禍で抑制されていた転職・退職需要が一気に顕在化。退職代行の利用件数が急増し、新規参入事業者も相次ぎました。
要因④:労働組合型サービスの台頭による信頼性向上
弁護士監修・労働組合連携をうたうサービスが増加し、「怪しいサービス」というイメージが払拭されました。利用ハードルの低下が新規需要を掘り起こしています。

